今年最後の更新として、3月のブログ開設から今に至るまで、主力コンテンツとして活躍してくれたMHWのレビューをしてみようと思う。僕はおよそ10年前にプレイして心奪われたMHP2Gからのプレイヤーで、それなりにこのシリーズには思い入れ深いところがある。
そんなモンハンが新作として売り出したMHWは、その実史上最多の売上を叩き出し、海外でも評価され、GOTYにノミネートされるまでに有名になった。そんな作品を、僕はシリーズ経験者としても、ただのアクションを愛好する人としても評価できたらと思う。そしてなにより、MHWを今もプレイしている人も、やめてしまったという人も、「こんなゲームだったなぁ~」みたいに振り返ることのできる思い出話みたいな記事にしたいと思っている。
この前編では、僕が良いと感じた点を中心に、MHWを褒めるパートを、後編ではちょっと愚痴りながら、でもきっとこうなったら良いな、みたいなパートをお送りして、今年を締めくくれれば、と思う。
※このページでは公式サイトの画像をイメージとして掲載しています。
現代のアクションゲームとして“転生”したモンハン
初代モンスターハンターから4作目までのナンバリング、集大成としてのXのあとに出た、今までのシステムを一新したMHW。それはシリーズ最新作というよりも、新たなアクションゲームとして転生したと表現するのがふさわしいと僕は思う。
良くも悪くも独自路線だったこれまでのモンハン
ハンティングアクションというジャンルは、モンハンに続く、GOD EATERや討鬼伝といったゲームを生み出した、独自なゲームであったのは間違いない。けれども、それが幸いして、なかなか見直されなかった部分も多かったのが事実だ。
“新作”が出ない
モンスターと人間が仰々しい大きさの武器を使って対峙するゲームは別に独自路線でもなく、むしろメジャーな部類に入るだろう。一方で、モンスターハンターというゲームは初代(2004年発売)から根幹となるシステムには一切手直しがされなかったゲームである。
エリア移動ごとに挟まれるロード、流石に不自然な棒立ちでの回復使用、真後ろを向いたままカクカク旋回するモンスター。こういった要素は、MHWになるまで変更されることはなかった。
PS4で動き回るアクションゲームのモンスターは滑らかに動く一方で、同時期に発売されていたMHXでは10年前とさして変わらないクオリティのモンスターが敵対していたのだ。
そういったゲームが一定数売れていたのは、モンハンだから、だろう。一度ヒットを飛ばしたゲームは、もれなく一定数のシリーズだから買ってくれる層を生み出す。特にモンハンが愛された理由の一つである、携帯機を使ったマルチプレイは、誰かが買えば周りの数人が買うという現象を引き起こす。
そういったわけで、特に変えなくても売れる、下手に変えてしまえば売れなくなるかもしれない、携帯機の性能は初代のPS2版を表現できる程度にはあった、などの要素が相まって、根本的には変わらないモンハンが発売され続けていた。
※実は3作目にあたるTriでは水中戦の導入や描画の変更などを試みていたが、結局4以降は携帯機路線の今までのシステムに近づいてしまった
同じシステムの中でインフレし続ける
根本的には変えなくても、新しい要素がなければユーザーは離れていってしまう。銃を撃つだけのはずのFPSが多種多様にあるのと一緒である。
モンハンではシリーズを経るごとに、今までの要素を残しながら、従来のモンスターを強化したり、ハンターの動作を強化するなどして作品を盛り上げてきた。この事自体は別にどんなゲームでも一緒だ。しかし、モンハンはシリーズを5つも重ねたため、モンスターもハンターも異常なまでにインフレしてしまった。
初代モンハンにあった、モンスターの生きる世界に住むハンターとしての生活を体感する、というテーマは、いつしか超能力ハンターVS究極生物を体感することになっていた。
愛されるモンスター達と武器
こうは言っても、モンハンは売れてきたゲームである。その原因はやはり、モンスターと武器がどれも個性的で魅力的だったからである。
モンスターごとの個性は確かに際立っているけれど、どこか似ているモンスターは似ているような攻撃をしてくる。そういう、アクションゲームのボスをしっかりとつとめる個性を持たせつつ、どこか生き物らしい系譜を物語らせるモンスターのデザインは絶妙だ。
だから僕も、シリーズが発売されるごとに対峙する新モンスターにどこか過去作のモンスターの姿を見つつも、目新しい攻撃に感動する、そういった体験を生み出すノウハウは、モンハンが得意とする要素だったと思う。
そしてまた、全14種類ある武器は、独自に進化し、どれも魅力を持っているのが事実だ。もちろん、登場当初はパッとしなかった武器も、MHXの頃にはどれも独自の動きを持っていた。武器を多種装備できるゲームはあっても、ここまでモーションが別個に用意されているゲームはほとんどないだろう。
そう見ていくと、ハンターVSモンスターのアクションゲームとしては高い完成度を持っていたシリーズではあったのは間違いないが、変わらないシステムや見た目、初心者を悩ませるインフレしたゲーム環境が特に普及の遅れた海外で伸び悩む原因を作っていたゲームだったと僕は思う。
温故知新が生み出した、広く受け入れられる新作
完全新作として発売されたMHWは、奇しくも初代モンハンが思い描いた、ハンターライフを描く作品にとなっていた。完全新規で作り直したグラフィックとシステム、ハンターとアクションが相まって、多くの人が楽しめ、そしてアクションゲームとして、モンハンとして深く楽しめる作品が出来上がった。
飛躍的に向上した、生態系の描写
MHWが圧倒的なグラフィックか、と言われると2018年のゲームとしては極めて標準的だと思う。けれども、MHXXの次の作品として考えるなら、大きな飛躍だと思う。
もしモンスターの住む世界を表現しようとするならば、モンスターをよりよく描写することはもちろんのこと、その環境もよりよく描写しなければならない。これを十分に可能にするには初代の発売されたPS2というハードは性能不足だと言わざるを得ないだろう(MGS3のような例外はあるにしても)。
PS4ともなれば、オープンワールドゲームという極めて広いマップを一定以上のクオリティで描写することも難しくなくなってきた。ハードウェア的な限界が取り払われたことにより、開発側も“本当にやりたかったモンハン”が出来たのだと思う。
これはいままでのシリーズのオープニングムービーやモンスターごとに用意されていた生態ムービーといった、プレイ体験としては表現できなかった生態系を、ゲームのリアルタイムな体験として表現することが可能になったのだ。
モンスター同士が攻撃し合うシステムや個別に設定された縄張り争い、ハンターがマップのオブジェクトに積極的に干渉する環境利用はその一例だろう。
それまではほとんどがアイテムとして存在だけが示されていたモンスター以外の生物も積極的に表現され、ただのモンスターと対峙するだけではないゲームではなくなったと言える。そしてなにより、そういった細かい表現を増やしたことによって、環境生物を集めたり眺めたりする、新たな楽しみ方が提示され、楽しむユーザーも生まれたことも事実だ。
グラフィック性能はゲームの面白さに必ずしも影響するわけではない。しかし、優れたグラフィックによって新たに生まれる楽しみ方や体験というのが、MHWの随所に現れていると思う。
不自然さを消して質を高める
僕がモンハンのかつての不満要素で掲げた、回復薬を棒立ちで飲むハンターや、カクカク真後ろを見ながら旋回するモンスター。こういった要素は、シリーズ経験者としてはいつものやつ、と捉えることも出来たけど、現代のゲームを体験している人からすれば不自然極まりない部分だ。
MHWではハンターは回復薬を使用する時は、動きながら使用できる様になったし(移動速度は低下するので、従来の回復が隙という要素は残っている)、モンスターはカクカク旋回する代わりに、一度ハンターを首を回して確認した後、勢いよく攻撃するようになった。
アクション以外でも、モンスターの素材が入らないからと言って持っている回復薬を捨て始めたり、アイテムボックスにイベントクエストのチケットがたくさんあるのでモンスターの素材を売り払ったり。アイテムの持ち込みに上限があるのは戦術として楽しめるけど、クリア後の報酬ぐらいストレスフリーでいいだろ!と僕は感じていた。
ゲーム攻略に関係のない理不尽さ、というのは僕は正直そのゲームを、“人を選ぶゲーム”にしてしまうと思う。だから、シリーズとしてファンを多数抱え、さらに新たなファンを獲得することを見込んで設計されたMHWはこれらの要素を排除することで進化したと言えるだろう。
いつも通りの、いつも以上のアクション
個性的なモンスターと豊富な武器達。今までモンハンが愛される理由であったアクション面は、見た目は大きく変わったMHWのなかでも、確かにモンハンらしさとして残っていた。
無論、それは新モンスターばかりでなく、懐かしさを感じさせる旧作出身のモンスターが多く出演していたこともあるのだけれど、ゲーム性としてのモンハンらしさがそこには感じられた。
ポチポチゲーという単語が生まれ、マリオにはスキップ機能が搭載されるようなこの時代で、モンスターごとに攻め方、技の選択、場合によっては武器の変更すら視野に入ってくる奥深い戦闘が可能なタイトルは少ない。
基本的にはハンターは生態系における弱者であり、モンスターはほとんど怯まずに猛攻を続ける。シリーズを通して設定されてきたモンスターが圧倒的に有利な状況をハンターが隙をかいくぐって攻撃する。初代モンスターハンターから揺るがないゲーム性がMHWにもしっかりと備わっている。
むしろ、ハードウェアの制約から解き放たれたことにより、ハンターもモンスターもよりアグレッシブに動き回れるようになった。向上したグラフィックの性能も相まって、より迫力のある、そして爽快感のあるアクションが楽しめるようになったのは間違いなく、アクション面でも進化したと言えるだろう。
過去作プレイヤーをニッコリさせる演出
僕がMHWを購入して3日でHRを開放したのは、もちろん暇だったのもあるけれど、それだけのめり込む要素が数多くあったからだと思う。特に、過去作を知っているからこそ楽しめる要素は、随所に散りばめられている。10年前にPSPのMHP2Gでモンハンに出会った僕にとって、PS4のMHWで久々に再会したモンスター達を見たとき、懐かしさと進化を感じたことを今でも覚えている。
過去作からも多くのモンスターが登場した
最早モンハンの看板とも言えるリオレウスや、ちょっとマイナーなボルボロス、すでにDLCとして予告されていたイビルジョーなど。さらに本作の根幹を担う古龍も過去作から多く登場したモンスターだ。
これらのモンスターが登場することは過去作プレイヤーとしてはとても嬉しいことだが、それ以上にMHWの舞台で、より繊細で、より強大に描写される彼らには一種の感動を覚えた。
ただ真上に飛ぶことしか出来なかったリオレウス。尻尾がエビフライにしか見えないボルボロス。古龍のわりには荘厳さというよりはひょろひょろしていたキリン。長い時間を経て、MHWに登場した彼らは、かつて生態ムービーで補完していた姿を目の前にしているようだった。
新しいけど似ているモンスター達
ジュラトドスやラドバルキンというモンスターは、すでにプレイしている人ならわかる通り、ヴォルガノスやウラガンキンというモンスターと極めて似ているモンスターだ。これらの新モンスターが、過去作のモンスターよりも前に出てくるのが、シリーズ経験者としては憎らしい演出だな、と思う。
モンハンをプレイしていると、このモンスターはあの系譜だな、と思わせるものが多く登場する。例えば同じ飛竜種でもリオレウスとリオレイアは当然似ているが、ディアブロスとバゼルギウスはコンセプトは違えど、突進や咆哮のモーションは酷似している。
そういった意味で、このモンスターがいるなら、あのモンスターもいるのでは?という予想をさせるのがジュラトドスやラドバルキンという存在なのだ。
個人的に気に入った点
ぶっちゃけこのゲームに費やした時間はプレイ時間や攻略を考えたり記事を書いた時間を含めれば1000時間を超えるので、書こうと思えばいくらでも書けるような気がする。だから、まあ総評としてこれまでのことを。そして以下は意見が分かれるだろうが、僕の気に入った点を述べていく。
ソロでは爽快感を、マルチでは達成感を提供した
マルチプレイのモンスターの体力が変動すること、ソロのほうが早くクエストがクリアできる可能性があることなど、ちょっと議論が活発な部分だ。でも僕は、結構このバランスを気に入っている。
というのも、僕の中に、パッケージで売るPvEゲームぐらい、一人でクリアさせてほしい!という主張があるからである。いや、それならモンハンやるなよみたいな意見が飛んできそうなものだが、これには事情がある。
いろいろなゲームをプレイして僕が行き着いたのは、結局飽きないのは対戦ゲームだ、ということだ(もちろんこれは僕の出した個人的な結論)。いわゆるPvPゲームの魅力に惹かれた人たちはこの考えを持っていると思う。
そういう人たちにとって、PvEゲームとはギクシャクせずに気軽にできるゲームという位置づけにあると思う。だから、僕はMHXシリーズの比較的オンラインマルチプレイが整備された作品でも、フレンド以外とマルチプレイに赴くことはほとんどなかった。
チーム戦のPvPのゲームをやっていると、自分のミスを重く感じるようになってしまう。そんな僕みたいなプレイヤーにとって、一人で気楽にできるPvEゲームの存在は大きい。今までのモンハンと言えば、MHWでいう歴戦個体のようなモンスターはマルチプレイが前提の体力をソロで削ることを要求されていたのだ。
だから、僕の中では「クリアはできるけど、同じモンスターと長時間戦うことを強いられてしんどい」という感情になることが多く、結局やりこみ段階で投げてしまうことが多かった。
そういった風に見ていくと、MHWのソロでは慣れているプレイヤーなら比較的爽快感を伴ってモンスターを討伐出来、攻略段階ではみんなで強力なモンスターを突破する、という味付けは結構好みだ。もちろん、その味付けの仕方には改善の余地はあると僕も感じているので、それは後編に書いていこうとも思っている。
蘇る名BGMと新たに生まれる名BGM
リオレウスのテーマ曲、テオやクシャのテーマ曲。これらの曲はシリーズプレイヤーとしては何度も対峙してきたプレイヤーには無意識のうちに覚えている楽曲が沢山ある。プレイしたあとに改めてBGM単体で聞いてみると、プレイした時の記憶がよみがえる。ゲームには切っても切り離せないBGMだが、モンハンはキャラごとに印象深いBGMが用意されている。
そんな過去作モンスターにセットで存在していたBGMは、MHWの雰囲気に似合うように、より豪華になったアレンジで再登場している。特に僕が感動していたのは、ネルギガンテの次に対峙したクシャルダオラの戦闘中に、どことなく聞こえてきたフレーズだ。竜巻に悩まされながらも懐かしさを覚えていた。
もちろん、今作から登場したBGMも負けていない。例えば、今作をプレイした人は嫌というほど聞かされたバゼルギウスのBGMだが、冒頭のインパクトたっぷりの部分もさることながら、戦闘中に流れるテーマもかなり良いBGMだ。ヴァルハザクやネルギガンテも、古龍というポジションに似合った優れた楽曲だと思う。
新たなモンスターを新たなシステムで生み出すだけでなく、その雰囲気に似合ったBGMにも妥協していない。そういった姿勢がこのゲームの魅力の一つだと思う。
アップデートやイベントで要素が増える楽しさ
今までのモンハンでは、発売後にモンスターが増えることはなかった。もちろん、出会うために様々なことをしなければならない、隠しモンスター的な扱いのモンスターは存在していた。が、あくまでもパッケージとして売られたもの以上のものが手に入ることはなかったのだ。
もちろん、DLCで追加されたモンスターの数は多くはない。だが、MHWという新たな土壌で既存のモンスターを刷新し、新モンスターさえも作った作品に対して、MHXXのような膨大なモンスター数を期待するのは酷すぎると思う。
むしろ、今後の展望としてアップデートでモンスターや装備を追加することが出来る、ということがわかっただけでも、大きな進歩だと思うし、現にアイスボーンの発表で再びMHWが盛り上がったのも事実だと思う。
……というのと、アップデートで段階的に要素が増えていくと、ブログがとても書きやすいので助かっているというのがある。
前編のおわりに
もしモンハンに興味を持った知り合いがいるとしたら、僕は間違いなくMHWを勧めると思う。それは、もちろんシリーズを経験した人として一番ハマった作品であることだけでなく、ただのアクションゲームとしても十分面白いゲームだと思うからだ。
もちろん、アクションゲームとして面白かったのは実はシリーズを通してなのだ。ただ、モンハンはあまりにもシリーズとしての積み重ねが重いゲームだった。それはハンターやモンスターのインフレに見られるような、複雑化したシステムやあまりにも多いモンスターの種類とモーションのせいだ。一方で、過去のモンスターを登場させてほしいという往年のファンの願いもある。その結果としてMHXのような、ただ狩るだけのゲームが誕生してしまったは事実だろう。
そんなモンハンシリーズをシステムごと作り直し、新規モンスターも往年のモンスターもひっくるめて、生態系というシステムにまとめたMHWは15年を迎えるシリーズを蒸留したものと言えるだろう。モンスターと戦う以外の楽しみ方を提示した取っつきやすさと、歴史とも言えるほどのシリーズのノウハウを同時に楽しめるのはこの作品の明確な強みだと僕は断言する。
もちろん、不満点はある。しかし、新たなシリーズの幕開けとしてこれほどまでに楽しめ、そして今後の展開に期待できるように作り上げられたMHWは、シリーズ最多の売上を記録し、今年のGOTYにノミネートされたのは当然の結果かもしれない。
このようなゲームを発売当日から、ほぼ1年を使って攻略できたこと、そしてその情報を共有してくることが出来たことはかなり嬉しいことだ。そんな思い入れのあるゲームだからこそ不満点、改善してほしい点も見えてくる。そんな部分を後編では語って行こうと思う。
今回はここまで。お読みいただきありがとうございました。
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